質問:二酸化チタン光触媒の身近への応用は
回答本文:
二酸化チ
タンは白色顔料や食品添加物,歯磨き粉などの原
料としての使用されている安全で無害な材料である。最近光触媒として開発が進み,環境浄化材料や太陽電池としての応用研究が盛んに行われ,商品化されているものも多い。
二酸化チタ
ン光触媒は特定の波長の光を照射することにより,活性酸素やOHラジカルなどが発生し
,シックハウス症候群の原因となるアルデヒド類やダイオキシンや環境ホルモン,にお
いなど,様々な有機化学物質を安全かつ容易に分解することができる。太陽光や蛍光灯
の光によっても光触媒機能は発現する。OHラジカルは消毒や殺菌に広く使われている塩
素や次亜塩素酸,過酸化水素,オゾンなどよりはるかに強い酸化力を持つ。有機物を構
成する分子中の炭
素ー炭素結合,炭素ー水素結合等の結合エネルギーよりも,このOHラジカルのエネルギーの方がはるかに大きいため,これらの結合を簡単に切断して分解することができる。
最近,二酸
化チタン光触媒やアパタイトを複合化した二酸化チタンを歯科
分野へ応用できないか検討している。歯の漂白,入れ歯の洗浄やにおい取りなどのほかに,歯科医院内部のにおいや抗菌などが考えられるが,以下その取り組み例を紹介する。
歯の変色には歯髄内の出血,テトラサイクリン系抗生物質の投与,フッ素沈着などが原因となる内因性のものと,たばこのヤニ,コーヒー等による外因性のものがある
。外因性の変色は一般的には歯磨きなどによる口腔清掃や各種の歯面研磨材により一部
改善できる場合もあるが,これらの手段ではホワイトニング効果は得られない。 近年
,歯の漂白法が盛んに研
究され実際に臨床応用されている。漂白法は歯を削ることによる補綴的な手段に比べて心理的抵抗感が少ないが,より安全で短時間に簡単に漂白できる方法が求められている。
現在,米国
を中心に(日本でも一部試験的に輸入されている)高濃度の過酸化水素(35%)を歯
に塗布して脱色する方法が実施されている。しかし高濃度の過酸化水素は皮膚などに付
着した場合危険を伴うし,運搬も法律上通常の方法では行えない
。歯の漂白に使用する際も歯肉など軟組織に付着すると痛みや変色が生じることがあるため万全の注意を払わなくてはならず,歯肉部の保護など漂白の前準備に時間を要する。
二酸化チタ
ンは歯の有機系着色成分の分解にも有効に働くと考えられ,歯牙漂白剤として応用でき
る可能性がある。そこで,二酸化チタン光触媒を使用して歯牙漂白を安全に短時間に行
う方法を確立することを目的として,低濃度の過酸化水素と二酸化
チタン粉末を混合した溶液を抜歯した変色歯牙表面に塗布し,光を照射してその前後の色調の変化などについて観察し,二酸化チタンの歯牙漂白剤としての可能性を検討した。
二酸化チタ
ン粉末と3-6%の過酸化水素を混合した水溶液を調整し,これを抜歯した変色歯牙の表
面に適量塗布し,試作した光照射装置(ウシオ電機(株)製)を用いて波長約400n
mの光を照射した。5分経過毎に漂白剤を除去・交換して,これを1回から2回行ったところ,歯の色は明るくなり黄色みがなくなり,処理回数が増えるとともに漂白された。
いずれの歯
牙も5-10分の漂白処置で効果が得られ,色差計(日本電色(株)製)により測定した色
差(△E)は約8から20であった。色差は6.0以上
あれば,肉眼的に色調が明らかに変化して見えることから,この結果は本法の漂白効果の裏付けとなる。着色がかなり強い歯牙でも30分程度の漂白処理で極めて白くなった。
現在,市販されている入れ歯洗浄剤は酵素を使ったものが多いが,がんこな汚れやにおいを十分に除去できないという不満も多い。
入れ歯の汚
れには,通常の汚れの他
にたばこのヤニや歯石,口腔内の細菌によるものがある。特ににおいは入れ歯を使用する人にとって非常に重要な問題で,対人関係に自信がもてないなど社会的問題でもある。
プラスティ
ック製の床義歯は吸水性があり,汚れをそのままにしておくと,内部までしみこんで
悪臭の原因になることもある。歯科技工所で使用中の入れ歯を修正する時などにプラスティック部分を削った瞬間にしみこんでいたいやなにおいが発生する場合もあるという。
義歯の洗浄
方法としては,大きく分けて機械的清掃と化学的洗浄がある。機械的清掃は,ブラシに
よる清掃と超音波洗浄によるものが一般的で,専用
のブラシや専用の超音波洗浄機がいくつか市販されている。しかし,これらの方法でも十分とはいえず,洗浄後に微生物等が検出され化学的洗浄法との併用が推奨されている。
化学的洗浄
法としては,過酸化物系や次亜塩素酸系,酸,酵素
,消毒剤に分類される。しかし,いずれも長所,短所があり着色製の汚れやプラークを同時に除去するのは難しい。さらに酸を用いたものは金属部分を腐食させることがある。
そこで,光
触媒を利用して特に洗浄が難しい歯石やヤニの除去を行った。二酸化チタンと微量の酸
を水に溶かした洗浄剤に義歯を入れて日中,明るい
窓際に置くとヤニは完全に除去されきれいになった。さらに,頑固な歯石の付着した義歯でも同様の処理を行うことで簡単に除去することができにおいもほとんどなくなった。
紹介した例では太陽光を利用したが,ブラックライトなどを利用すれば同様の結果が20分程度で得られる。
病院では,
汚物
や薬品のにおいが気になる場合が多く,また喫煙室などでもたばこの煙により健康を害する場合なども考えられる。そこで,光触媒を病院内の壁などに塗布して実験を試みた。
病院の手術
室やトイレ,汚物室などに塗布(して1年以上経過しているが,処理していない汚物室
では強烈なにおいが感じられるが,塗布した部屋ではほとんどにおいは残っていない。
また
,ビルの外壁やタイルの目地に塗布すればかびの発生が防止できるし,食品のトレーなどに塗布した実験が実施)ではパンや餅のカビの発生が抑えられることがわかっている。
病院の喫煙室(名古屋市立の病院)に光触媒を塗布した人工観葉植物を設置した例ではアルデヒドや窒素酸化物の濃度が大きく減少した。
登録者:中部産学官連携センター 技術相談担当
tel:(052)911-2162
提供者:中部センター セラミックス研究部門
メソポーラスセラミックス研究グループ 野浪 亨
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